「んじゃ、今日からよろしくな」
一週間、一緒に居れるな。
上官の帰った後、漸く落ち着いたハボックにヒューズは改めて言った。
「はい、嬉しいです」
ほんのりと頬を染めたハボックは、可愛くて。
(ああっ、3日間も手ぇ出せねぇなんてっ)
我が身の小ささが恨めしい。
などと思いつつ、ヒューズは自分の顔を屈むようにして覗き込んでいたハボックの唇に口付けた。
ちゅっ。
「…っ、なっ、なっ」
真っ赤になってうろたえるのも可愛い。
「ま、今日はこれだけな。あー、失敗したっ、このサイズじゃなーんにも出来ねぇじゃん」
そう言いながらハボックの首に腕を回せば、ただぶら下るようになってしまってなんとも情けない。
(まぁ、たまにはこんなのも良いか)
まだ、ホワイト・デーのプレゼントは始まったばかりなのだ。
END
by momomame at 21:26 |
ジャン・ハボック少尉の愛犬? |
|
|
page top ↑
ハボックを大事にしたいと何時も思ってる。
でも、上手く出来ない自分が歯がゆくて仕方がない。
そんな。
情けない顔で、柔らかな金色の髪を撫でれば、漸くと言うタイミングで親友が口を開いた。
「…すまなかったな、ハボック。私が軽率だった。しかし安心したまえ。それは、お前の踏んだ練成陣よりも効力は短い。持って、三日だ」
ついでに言えば、お前へのお返しはそれじゃない。
「ヒューズの休暇に合わせて、お前にも四日間の休暇を申請してある」
ヒューズの公式の出張は三日間、仕事中に元に戻るだろう。
「後の休暇は、二人でゆっくりしておいで」
その言葉に。
ぐすんと鼻を啜りながらも、きょとりと見上げ。
ぱぁっ、と音がしそうな笑顔を見せた。
「ホントっスか?」
「ああ、ここ最近忙しかっただろう?…四日間の休暇の分、お前の仕事を内緒で前倒しにしてたんだ。…頑張ったご褒美も兼ねてだが。……ホワイト・デー、その方が良かっただろう?」
そして。
(くっそ、良いトコだけ持ってきやがって)
なんて内心で悪態をついてみても、結局は感謝の気持ちしかなくて。
「…あ、ありがとうござますっ」
心底嬉しそうに言うハボックの腕に抱き締められたまま、ヒューズは親友の粋な計らいに苦笑するしかなかった。
by momomame at 21:51 |
ジャン・ハボック少尉の愛犬? |
|
|
page top ↑
普段は淡々と仕事をこなす有能な軍人でもあるハボックが、案外と甘えたがりだと知っているのは、ヒューズだけだ。
何時も細々とした世話を焼いたり面倒を見るのはハボックなだけに、そうは見えないが甘やかされたいのはヒューズの方ではない。
薄々はマスタングも気付いているし、気付いているからこそハボックの事をずっと気にかけていたのだろうが、それでも本当のハボックを知っているのは、ヒューズだけなのだ。
なのに。
うっかりとそんな事も忘れて、ロイの仕掛けた悪戯に乗ってしまったのが情けない。
「…ごめんな。お前に聞いてからにしたら良かった。そしたらこんなにがっかりさせなかったのにな」
恋人を真っ先に抱き締める事も出来ない状況を自ら作り出した事を本気でヘコみそうになる。
(馬鹿だよ、俺。何でこんな縮んでんだよっ、抱き締めてやる事も出来ねぇじゃん)
「…中佐?」
「俺さぁ、ちょっと浮かれてたんだよ。お前にさ、バレンタインにケーキ焼いてもらってさ。そりゃ、今までずっと恋人居なかったなんつー事、言うつもりねぇけど。それでも、あんなに嬉しいバレンタインってなかったからさ」
それと同じだけ、何かしてやりたかったんだよ。
「それに、この前の時は子供から大人になるまでのハボックを全部、生で見れて凄げぇ嬉しかったからさ。けど、俺の子供の頃の写真なんて殆どねぇし。ハボックも見たいってんなら、見せてやりたいなって」
思っちまったんだ。
「ホント、ごめん」
そう言って、柔らかな金の髪を撫でてやれば、少しだけ赤くなった目で見つめてくる。
(ああ、やっぱちょっと泣いてたよ。くそっ)
by momomame at 21:32 |
ジャン・ハボック少尉の愛犬? |
|
|
page top ↑
泣きそうに、否、既に少しばかり泣いてしまっているらしいハボックと。
ハボックに抱き締められたままの状態で、子供とは思えないような凄まじい形相を向けてくる親友と。
ついでに背後から漂ってくる冷気にホークアイの不興まで買った事を確信して、マスタングは脂汗が額を伝うのを感じた。
特に小さくなった親友の形相は、絶対殺されると断言出来るようなもので。
マスタングは、背に腹は代えられないと奥の手に置いておいたプレゼントを差し出した。
(仕方ない。泣く子とハボックに勝てる訳がない)
☆☆☆
「な、なあ、ハボック、顔を見せてくれよ」
(くっそー、ロイのヤツ、覚えてろよっ、何がハボックも喜ぶだっ、泣いてんじゃねぇかっ)
内心で罵倒しながら抱き締めてくるハボックの肩越しに、睨みつければ予想外の展開だったのか引き攣ったような表情をしているが、知った事じゃない。
(後で絞めてやる)
心の中で誓いを立てつつ、今だけは自分より大きな背中を宥めにかかる。
「…やです」
ぐすんと、鼻まで啜る音が微かに聞こえて更に焦る。
「お前、見てみたいって言ってたって言うから、ロイの悪ふざけに乗ってやったんだけど…」
なあ、黙ってたら判んねぇぞ?
そう言ってみても、顔を上げるどころか更にぎゅっと抱き締める腕に力が入ってもその様子になんとなく判ってしまった。
(ああ、そっか。今日、ホワイト・デーだもんな。ぎゅってしてほしかったんだよな)
by momomame at 22:43 |
ジャン・ハボック少尉の愛犬? |
|
|
page top ↑
(ヤバイ、ヤバイ、ヤバイッ、非常にヤバイッ)
ホワイト・デーに合わせて、親友に東部への出張を持ちかけたのは勿論、マスタングだった。
元々、ホワイト・デーを恋人と過ごそうとしていた親友は一も二もなく、話に乗った。
そこまでは、良かったのだ。
出張の期間は、三日間。
それにくっ付けるようにして、四日間の有給を申請した親友は恋人と一週間一緒に居る計画を立てていたのだ。
その。
今までにない親友の行動が微笑ましいと思う心とは別のところで、羨ましいという気持ちもあったのも事実だ。
幸せに恋愛をしている親友が羨ましいと言う気持ちと、可愛がっているハボックを取られたような悔しさもあった。
何せ、部下としてと言うよりも気持ちは可愛い子供を見守る父のような気持ちでハボックを見守っていただけに、気分は娘を取られた父のようなもので。
二人が上手くいっている事を嬉しく思う反面、正直複雑な気分でもあったのだ。
だから。
ちょっとした悪戯心が動いた。
別に別れさせたいとかそんな事は、欠片も思ってはいない。
ただ。
ちょっと、二人の慌てた顔を見たかった程度の事だった。
なのに。
これはちょっと不味い事になったと思った時には、後の祭り状態で。
(しまったっ、ハボックは意外に寂しがりなのを忘れていたな)
by momomame at 23:04 |
ジャン・ハボック少尉の愛犬? |
|
|
page top ↑