マース・ヒューズ中佐の子犬

抱き締めた小さな体が、泣き疲れてもう一度眠りについたのを確認してから、ここまで入れられて来たバスケットの中に寝かせると、ヒューズはもう一度電話をかけ直した。

『待っていたぞ、ヒューズ』

 親友の声は、それ程には緊迫感が見られない。
 と、言う事は今回の事はそれ程には危険な事ではないのだろうかと思い、けれど情報部将校としてはハボックの存在の危うさが理解出来るだけに、ほっと安堵する気にもなれなかった。
「待つくらいなら、最初に電話を寄越せよ」
 苛立ちまぎれにそう当てこするように言えば、電話の向こうでは珍しくからかい混じりでもない苦笑が零れた。 
『いや、お前の事だからな。下手に電話で話せば、最後まで聞かずに東部で来てしまいそうだったからな』
 その言葉には、図星だけに反論できずにぐっと言葉を飲んだのが解ったのだろう。
『ま、練成陣自体は意外とポピュラーなものにアレンジを加えたもので、な。犬耳や尻尾くらいは問題ないが、アレンジの何がどう作用してハボックの年齢が若返ったのかが解らん。ただ、解るのはどちらも2週間程で効果が消えるだろうと言う事だけだ』
『それは、確かなのか?』
『ああ、元々この練成陣を考えた錬金術師は、あくまで一時的なキメラ化を研究していたようだ。…まあ、戦闘時のみキメラ化出来たなら、結構な戦闘能力だが。実際には、耳と尾が生えると言うだけの結果しか出せなかったようだが』
 その言葉に、ヒューズは心底ほっとする。
 もしも。
 ハボックが踏んだと言う錬成陣が、一時的ではなく半永久的なキメラ化を促すものだったらと思えば、正直目の前が真っ暗になる程の恐怖だった。
『しかし、その姿を下手に晒す訳にもいかんしな。…下手に勘繰られて、ハボックを人体実験用に攫われても困る。元の姿に戻るまでの間、ハボックは東部に居ない方が良いと判断した』
 だから、そっちに送ったと言われて慌てる。
 下手をすれば、こっちの方がハボックに取っては危険な筈ではないのだろうか。
 いや、絶対に危険な筈だ。
「ち、ちょっと待てよっ、こっちは中央だぞっ?何で、こっちの方が安全なんだよっっ」
『…今回の件は、大総統もご存知だ。…今回の練成陣の危険性もご理解いただいている。だから、表向きはハボックではなく子供が錬成陣の発動に巻き込まれた事にした』
 解るか?この意味が、と続けられてヒューズも不承不承頷いた。
 意味は、理解出来る。
 一時的とは言え、若返る事が出来ると言うのは何時の時代も権力者の最後の野望だろう。
『…まあ、な。けど、それで大総統は納得してらっしゃるのか?まさか、大総統からハボックに何かしてくるって事はないだろうな』
 その言葉に今度こそはっきりと解る程の、親友の呆れた言葉が降りかかった。
『確かにその可能性もあるがな、現時点ではハボックの踏んだ練成陣の形状は解っているんだ。ハボック自身を押さえなくとも、もう一度同じ錬成を行なう事も出来る。そんな中で、一仕官でしかないハボックを手元に置く必要はないだろう。…取り合えず、ハボックは休暇を取って実家に帰っている事になっている』
 せいぜい大事に、預かってくれ。
 そう言って切られた電話を前に、ヒューズは困惑の表情で長い間、受話器を見詰め続けていた。
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by momomame  at 21:37 |  小説 : マース・ヒューズ中佐の子犬 |   |   |  page top ↑

マース・ヒューズ中佐の子犬

「何がどーなって、こんなコトなってんだよっっ」

 受話器に向かって怒鳴り散らしている男の背中を見詰めつつ、ハボックは途方に暮れていた。
 まさかこんな事態に自分が巻き込まれるなんて事を、今まで想像もした事がなかった。
 いやいや、普通はこんな事態が起こるなどと誰も考える事はない。
 まさか。
 犬の耳と尻尾付きの子供になるなどと、普通の軍人は考えた事もない筈だ。
「解るように、説明しろっっ」
 多分、ヒューズが怒鳴っている相手はハボックの上官であり、彼の親友でもある、ロイ・マスタング大佐なのだろう。
「犯人は、お前かっ?」
 恐らく、ヒューズは大佐の仕出かした事だとでも考えたのだろうが、頭ごなしのそれにハボックは慌ててヒューズの服の裾を引っ張った。
「なら、誰がこんなコトするって言うだっ……、ん?」
 引っ張られた事に気付いたヒューズが、屈んでくれた事に嬉しくなって飛びつく。
「おおっ?どうしたんだ?」
「ち、ちがの、たいしゃじゃなーのっっ」
 けれど。
 必死に弁明しようにも、幼い口は言葉を上手く伝えられず。
 その口惜しさに泣きそうになる。
 と、言うか口惜しいと思った瞬間にはもうポロリと涙は零れていて。
 ひっく。
「うわっ、ハボックっ、泣くなっ」
 慌てたヒューズは、また電話すると言って電話を切った。
 そして。
 恐々と言う仕種で、頬を伝う涙を指の腹で拭ってくれた。
「……泣くなよー……。俺、お前に泣かれるのダメなんだよ」
 その言葉に、きょとんとする。
 ヒューズは、ハボックに泣かれるのはダメだと言ったのだ。
 その意味が解らなくて、首を傾げる。
「言っただろう?お前が可愛いって」
 
 ……好きなんだよ。

 そう言って、頬を両手で包み込むようにして。
 も一度、呟いたのだ。
「…冗談だと思ってだんだろ?…まあ、俺も冗談っぽく言ってたしな。伝わってない事、解ってたけど。…お前の事、本気で好きなんだよ」
 だから、泣かれるとどうして良いのか解らなくなって、困る。
 そう言ったヒューズの顔は、本当に困っていて。
 ひく。
「…でも、たいしゃ…わるくなーの…。おれ、ふんじゃっ…っ」
 その言葉は自分でも意味を成していないと判るだけに、ヒューズに通じない事がもどかしい。
 もどかしくて、再び涙が溢れそうになるのに、ヒューズは慌てた様子で頷いた。
「ああ、大丈夫だ。だいたいのトコは聞けたから。…トラップ代わりに書かれてた練成陣踏んじまったって?」
 その言葉に、また泣けてくる。
「お、おれが、うっかりしてちゃ…、からっ」
 ふえ。
 そんなハボックをヒューズは抱き上げて、ぎゅっと抱き締めてくれた。
「…ロイが言ってたぞ?今回の錬成陣は、ロイでもちょっと解らないものだったって。…お前が迂闊だったんじゃない」
 そう言って、何度も何度も髪を撫でられて。
 ハボックは何時の間にかもう一度、眠っていた。
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by momomame  at 23:20 |  小説 : マース・ヒューズ中佐の子犬 |   |   |  page top ↑

更新のペース

どこの検索にも登録していない今の状況で、訪ねて来て下さる方がいらっしゃるのはとても嬉しいvv(*^_^*)

更新のペースは2〜3日に1回になります。
体調に問題がなければ(笑)
これから色々アップしていきますので、また寄って頂けたら幸いです。
by momomame  at 23:02 |  ひとりごと |   |   |  page top ↑

マース・ヒューズ中佐の子犬

「ああーっ、煩せぇぇっ」
 そのヒューズの明らかに寝不足の顔に、どうやら暢気にドアを景気良く叩いていた兄の方も、不味い事をしたかも知れない事に気付いたように、とって付けたような笑顔で笑うのを見下ろした。
「…中佐、もしかして寝てた?」
「ああ、…二日程徹夜で三時間程前に帰って来て、な」
 その言葉に、今どれだけヒューズが眠いのかに気付いて、弟の方が慌てて謝ってくる。
「す、すいませんっ、ちょっと、急ぎだったものですらっ」
 その様子に本気で悪気がなかった事を感じ取り、ヒューズは不承不承頷いた。
「…ああ。ま、入れよ」
 そう言って頷いたヒューズに、兄弟は慌てた様子でひどく大きな藤のバスケットのようなものを押し付けて来た。
「いえっ、本気で時間ないんですっ、今から北部行きの列車に乗るつもりなんでっ、ただ、大佐からこれ、中佐に渡して欲しいって頼まれただけなんでっっ」
「えっ、おいっ?」
 鎧の弟に押し付けられたバスケットは、妙に重く。
「じゃ、中佐っ、列車の時間があるから俺等、行くなっ」
 そう言って、兄弟揃って走り出した。
 その様子をただただ呆然と見送るヒューズに、途中で振り返った兄弟は、大きな声で言った。
「じゃ、確かに渡したからなーっっ」
「中身については、大佐に電話して聞いて下さいーっっ」
 そう告げた兄弟は、もう振り返る事もなく猛然とダッシュで走り出したのだ。
「……何だ?ありゃ…」
 妙な具合だった。
 列車の時間が間に合わないとかそう言う問題の、走りじゃなかったなと考える。
 まるで、この場から逃げ出すような勢いだった。
 首を傾げつつ、部屋の中に戻ったヒューズは好奇心の赴くままに藤のバスケットの蓋を開いて。
「………え?」
 絶句したのだ。
絶句などと言う生易しいものではなかった。
 悲鳴をあげたいのに、声が出なかったと言うのが正解だった。
 藤のバスケットの中には、柔らかそうな真っ白な毛布が敷き詰めてあった。
 それだけなら、何の冗談なのかと思っただろう。
 けれど。
 その毛布に埋もれるようにして、眠る子供が居たのだ。
 それも。
 ヒューズの良く知る相手だった。
 恐る恐る、指先で触れてみる。
 金の髪の手触りは、ほぼ普段と同じであった。
 でも、触れた頬は普段よりもふっくらと柔らかくて。
「……んぅ?」
 触れた手の感触が擽ったかったのだろうか、小さく唸った相手は眼を覚ました。
 ぱち。
 ぱちぱち。
 そう、音がしそうなくらいびっしりと金色の睫に覆われた瞼が開いて。
 綺麗だと常々思っていた青い眼が、ぽやりとした色を浮かべて開いた。
 それから。
 むくりと起き上がると。
「…ひゅーじゅ、ちゅうしゃ?」
 呟いた言葉に。
 この。
 可愛すぎる生き物が、正しく自分の大事なジャン・ハボック少尉その人であると理解する。
 理解するが。
 その姿は、驚くべきものであったのだ。
 年は、どう考えても三つか、四つ程。
 その愛らしさは、天使のようだ。
 しかし。
 その頭とお尻にある物体がなければ、の事だ。
 いや。
 あったら、あったで可愛いけれどと、現実逃避した事を考えながら(いや、ある意味では本気だったけれど)ソレを見詰めた。
 ふさふさっ。
 ぴくぴく。
 ハボックらしき幼児の頭には金色の髪と揃えの耳と、その可愛いお尻には、同じく金色のふさふさの尻尾が生えていたのだ。
「…ハ、ハボック、…か?」
 恐る恐る問えば、少しだけ困った様子でこくりと頷いた。
「……あい」
 その愛らしい仕種に眩暈を覚えながら、ヒューズは反射的に電話の受話器を握り締めていた。
 後々、この時程驚いた事はこの短いような長いような人生の中で初めてだったとハボックに、ヒューズが語るのは随分後になってからの事だ。
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by momomame  at 22:51 |  小説 : マース・ヒューズ中佐の子犬 |   |   |  page top ↑

マース・ヒューズ中佐の子犬

コンコン。
 コンコン。
 ノックの音と共に、無遠慮な声が響いた。
「ヒューズさーん、お届け物ですー」


 マース・ヒューズ中佐殿はその日、久しぶりのまる一日の休暇を謳歌すべく、ベッドに潜り込んだのはもう空が白みかける時間だった。
三日程徹夜の朦朧とする頭で、ああそう言えば随分と長い間、東部に顔を出せていないなと考えた。
別に親友の顔を見たい訳ではない。
いやいや、確かにそれも目的の一つではあったけれど。
それ以上にあの金色の髪の、大型犬の子供のような青年に会えるのが楽しくて仕方がないのだ。
最初は、ただ構えば構うだけ素直な反応を返す青年が可愛くてついつい構っていた。
けれど。
今では、それだけじゃない。
あの青年の、全部が欲しいのだ。
欲しいと願っている自分に気付いて、初めてヒューズは自分があの青年に『恋』をしている自分を自覚したのだ。
だから、何かと口実を作って東部くんだりまで会いに行っているのだ。
そんな自分の涙ぐましい努力を、親友はからかい混じりに応援してくれている。
仕官学校からの付き合いだ。
ヒューズが、恋愛に対してあまり夢を持っていない事を知っている。
それは、別に何かきっかけがあった訳ではないけれど、どうにもこればかりは自分でも治しようがないと思っていた事だ。
色々な女達と付き合いながらも、誰一人として本気ではなかった。
ただ都合の良い時に、抱かせてくれる女であれば誰でも良かった。
一時の快楽と、温もり。
それだけで充分だったのだ。
世間では親友の女遊びに尾鰭が付いた噂が流れてはいるけれど、本当はそう言った意味で『悪い男』だったのは、自分の方だと言う事をヒューズは自覚している。
親友はただ綺麗なものが好きなだけだ。
綺麗な女達に囲まれて彼女達の笑う顔が見たいだけと言う、些か男としては奇妙な趣味をしているだけだ。
それが、モテない男達の僻み根性で流された噂話から、ドンドン尾鰭がついて今では、『ロイ・マスタングは無類の女好きだ』と言う事で定着してしまったのだ。
けれど。
ヒューズは、確かに『悪い男』であったのだ。
つい最近まで。
愛してもいないし付き合った覚えもないが、女が途切れた事もない。
なのにそんな噂一つないのは、隠す事が上手いからだ。
隠す気の一切ない親友との、違いだった。
そして今まで、そんな自分の行動を後悔した事もなかったけれど、今は少し後悔している。
いや、すごく後悔している。
あの青年に、恋をして。
初めて。
今までの自分が、どれだけ不実で『悪い男』だったのかを自覚した。
自分では、出来るだけ遊びと割り切れる女ばかりを選んでいたつもりだけれど、それでももしも相手にちゃんとした気持ちが存在していたとしたら、全部無視した形になっていただろうと思う。
そんな、不実な男だったのだ。
だから。
正直、あんな素直で可愛い青年に触れて良いのか今もまだ結論は出ていない。
一見すると、大柄な体格に銜え煙草で上官に対する敬語もなっていない態度はひどく不遜なものに見る者には映る。
けれど、本当は屈託のない素直な性格をしていて。
触れるのに躊躇する程に、何処か幼い無垢さがある。
なのに、親友は応援してくるのだ。
こんな男に。
あの純粋さが、足りなかったものなのだろうと。
そんな応援に内心、戸惑う。
けれど、同時に純粋に嬉しくて。
親友に対する感謝と共に頭に浮かんだ言葉を、寝言のように呟いた。
「……あー、…会いてぇなー…」
 そうして。
ダイブした筈のベッドの上で意識を失う勢いで眠ったにも関わらず、ものの数時間でノックの音でたたき起こされて、ヒューズは非常に機嫌が悪かった。
 コンコン。
 しつこくノックする音も、無視してそのまま眠ってやろうとまで考えていたと言うのに、そのノックはちょっと殺意を覚える程度には執拗だった。
 コンコン。
 コンコン。
「ヒューズさーん、お届け物ですー」
 暢気な声には、聞き覚えがある。
 あの鎧の弟と、その兄である鋼の錬金術師のものだ。
 一応は、知り合いなだけに出ない訳にも行かずに、不機嫌さを隠す事なく、乱暴にドアを開く。
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by momomame  at 23:35 |  小説 : マース・ヒューズ中佐の子犬 |   |   |  page top ↑

マース・ヒューズ中佐の子犬

この状況を、どうしろと言うのだろうか。
 こういう場合の対処方法は、士官学校でも教えてくれなかった。恐らく軍の規定書にだって載ってはいないだろう。
 そんな事を暢気に考えてちょっと現実逃避したくなる自分を叱咤しつつ、この状況から脱出すべく、側にいる上司に助けを求めるように視線をおくってみる。
「大佐……」
薄情な上司は笑ったまま、助けてくれる気はないようだ。
まあ、最初からあまり期待はしてもいなかったけれど。
それでも落胆は抑えられずに、肩を落とした。
人より大きく育ってしまったハボックは、他人から頭を撫でられた記憶は随分昔のものしかない。多分、一番新しいものでも中学に上がる前のものではなかっただろうか。ハボックは成長期の随分最初の段階で伸び始め、以降士官学校を卒業しても伸び続けた。
だから。
この行為には、ひどく戸惑いがあるのだ。
まさか、この年になって年上の同性でその上、上官でもある相手に頭を撫でられるとは思いもしなかったのだ。
おまけにしっかりと肩を抱きしめられていて、逃げる事も出来ない。
これが同僚だとか嫌な上官だったりしたら別だが、自分よりも上官で直接の上司の親友で、何より相手が嫌いでないのが抵抗する気を削いでいた。
しかも相手は、抵抗すれば抵抗しただけ闘志を燃やしてきそうな人なのだ。
嫌がらせでもなく上機嫌で撫で回しているなら、するがままにしておく以外に穏便に済ませる方法がない事くらいハボックは嫌と言う程知っている。
自慢じゃないが、下手に逆らって酷い目にあった事は例を上げればキリが無い程だ。
それだけに、ハボックはその行為に深い意味なんて見出してもいなかった。
まさか。
ヒューズが本気だなんて、欠片も想像してはいなかったのだ。
何せ、変人と紙一重のような上司の親友なのだ。
多少の奇天烈な行動は、当たり前だとさして気にもとめていなかったのだ。
それが、後で自分をとんでもない状況に陥らせる事となるとは思いもせずに。
「嫌じゃないよな?」
 ご機嫌のヒューズに、嫌だと言わない事を疑ってもいない声音で断言されて。
ハボックは思わず目の前の髭面を睨んでみるが気にした様子もなく、ただ肩を抱く手に力が篭った。
離してやらないと主張するように。
確かに。
自分でも自覚はある。
嫌ではないのだ。
ただ困ってしまうだけで。
自分より大きな男の頭を撫でる事のどこがそんなに楽しいのか、ヒューズは飽きもせずにハボックの柔らかくて収まりが悪い髪を弄ぶように、頭を撫で続ける。
「…中佐……」
優しい記憶に誘われるのも原因としてあるけれど、ヒューズの手がとても気持ちが良いから困るのだ。
ヒューズは東部に来る目的を、ハボックを構いたおして甘やかせる為だけと公言して憚らない。
一応は、仕事もしているが(おい)
「大佐!これって、セクハラですかね?」 
「気持ち良いって顔してたらダメだろ」
 怒るに怒れず、頭を撫でられ続ける事に耐えられずに、上官に憎まれ口を叩いても、にっこり笑いながら交わされてしまう。
「ヒューズ…頭を撫ぜて、セクハラで訴えられたら軍部初の案件になるかもな」
 ロイが楽しそうに茶化す。
 そうだった。
 どうせ、親友。
 類は友を呼んでいる事に今更、気付かされて泣きたくなった。
「訴えるなら、せめて手を握ってからにして欲しいなぁ…おじさんとしては」
 そう言いながら腰に手が回され、撫でられていた頭が引き寄せられた。
 そして、また。
 なでなで。
 なでなで。
 そんな長閑な状況から一変、こんな事態がやって来るとは思ってもいなかったジャン・ハボック少尉・二十四歳の春だった。
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by momomame  at 23:54 |  小説 : マース・ヒューズ中佐の子犬 |   |   |  page top ↑

オンリーに参加します!

9/17のヒューハボオンリーに参加する事になりました!
サークル名は『題名に偽りあり』です。
来られる方は、覗いてみて下さい。
現在2冊本が出ていますが、このオンリーに合わせて新刊が出る予(あくまでも予定(笑))
by momomame  at 00:25 |  イベント |   |   |  page top ↑
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