どこの検索にも登録していない今の状況で、訪ねて来て下さる方がいらっしゃるのはとても嬉しいvv(*^_^*)
更新のペースは2〜3日に1回になります。
体調に問題がなければ(笑)
これから色々アップしていきますので、また寄って頂けたら幸いです。
by momomame at 23:02 |
ひとりごと |
|
|
page top ↑
「ああーっ、煩せぇぇっ」
そのヒューズの明らかに寝不足の顔に、どうやら暢気にドアを景気良く叩いていた兄の方も、不味い事をしたかも知れない事に気付いたように、とって付けたような笑顔で笑うのを見下ろした。
「…中佐、もしかして寝てた?」
「ああ、…二日程徹夜で三時間程前に帰って来て、な」
その言葉に、今どれだけヒューズが眠いのかに気付いて、弟の方が慌てて謝ってくる。
「す、すいませんっ、ちょっと、急ぎだったものですらっ」
その様子に本気で悪気がなかった事を感じ取り、ヒューズは不承不承頷いた。
「…ああ。ま、入れよ」
そう言って頷いたヒューズに、兄弟は慌てた様子でひどく大きな藤のバスケットのようなものを押し付けて来た。
「いえっ、本気で時間ないんですっ、今から北部行きの列車に乗るつもりなんでっ、ただ、大佐からこれ、中佐に渡して欲しいって頼まれただけなんでっっ」
「えっ、おいっ?」
鎧の弟に押し付けられたバスケットは、妙に重く。
「じゃ、中佐っ、列車の時間があるから俺等、行くなっ」
そう言って、兄弟揃って走り出した。
その様子をただただ呆然と見送るヒューズに、途中で振り返った兄弟は、大きな声で言った。
「じゃ、確かに渡したからなーっっ」
「中身については、大佐に電話して聞いて下さいーっっ」
そう告げた兄弟は、もう振り返る事もなく猛然とダッシュで走り出したのだ。
「……何だ?ありゃ…」
妙な具合だった。
列車の時間が間に合わないとかそう言う問題の、走りじゃなかったなと考える。
まるで、この場から逃げ出すような勢いだった。
首を傾げつつ、部屋の中に戻ったヒューズは好奇心の赴くままに藤のバスケットの蓋を開いて。
「………え?」
絶句したのだ。
絶句などと言う生易しいものではなかった。
悲鳴をあげたいのに、声が出なかったと言うのが正解だった。
藤のバスケットの中には、柔らかそうな真っ白な毛布が敷き詰めてあった。
それだけなら、何の冗談なのかと思っただろう。
けれど。
その毛布に埋もれるようにして、眠る子供が居たのだ。
それも。
ヒューズの良く知る相手だった。
恐る恐る、指先で触れてみる。
金の髪の手触りは、ほぼ普段と同じであった。
でも、触れた頬は普段よりもふっくらと柔らかくて。
「……んぅ?」
触れた手の感触が擽ったかったのだろうか、小さく唸った相手は眼を覚ました。
ぱち。
ぱちぱち。
そう、音がしそうなくらいびっしりと金色の睫に覆われた瞼が開いて。
綺麗だと常々思っていた青い眼が、ぽやりとした色を浮かべて開いた。
それから。
むくりと起き上がると。
「…ひゅーじゅ、ちゅうしゃ?」
呟いた言葉に。
この。
可愛すぎる生き物が、正しく自分の大事なジャン・ハボック少尉その人であると理解する。
理解するが。
その姿は、驚くべきものであったのだ。
年は、どう考えても三つか、四つ程。
その愛らしさは、天使のようだ。
しかし。
その頭とお尻にある物体がなければ、の事だ。
いや。
あったら、あったで可愛いけれどと、現実逃避した事を考えながら(いや、ある意味では本気だったけれど)ソレを見詰めた。
ふさふさっ。
ぴくぴく。
ハボックらしき幼児の頭には金色の髪と揃えの耳と、その可愛いお尻には、同じく金色のふさふさの尻尾が生えていたのだ。
「…ハ、ハボック、…か?」
恐る恐る問えば、少しだけ困った様子でこくりと頷いた。
「……あい」
その愛らしい仕種に眩暈を覚えながら、ヒューズは反射的に電話の受話器を握り締めていた。
後々、この時程驚いた事はこの短いような長いような人生の中で初めてだったとハボックに、ヒューズが語るのは随分後になってからの事だ。
by momomame at 22:51 |
小説 : マース・ヒューズ中佐の子犬 |
|
|
page top ↑