Sun
11/19
2006
マース・ヒューズ中佐の子犬3
カール・フェルナンドは、大袈裟な溜息を零した。
普段どれだけ軽い態度を取って周囲を煙に巻いてみせようと、彼の上官は自他共に認める切れ者であった。
そして。
良い人に見せてその実、とんでもない悪い人である事もカールは不幸な事に知っていた。
女性達との付き合いも親友であるロイ・マスタング大佐程に派手な訳ではないけれど、そこそこには激しく。
しかし、マスタング大佐よりも性質の悪い事ばかり仕出かしていた。
女に優しく見えながら、げれど本当は彼女達に欠片も感心がない事に、副官と言う立場で側に居るが為に見えてしまって。
本当は、女遊びで浮世を流すマスタングの方が何倍もマトモな事に嫌でも気付かされた。
その人当たりの良い笑顔で、総てを煙に巻いて。
誰にも、その裏にある悪い顔を見せずに。
そして。
何よりも性質が悪いのは、
戦場でさえ、軽やかにステップを踏むように渡り歩いてしまう。
恐らく。
自分の命なんてものに、欠片も執着がないのだろうとカールは思っている。
そして直接聞いた事はないが、その通りなのだろうとカールは確信していた。
そんな、男であったのだ。
マース・ヒューズと言う男は。
その上官が、気付けばあの青年にメロメロになっていた事に気付いた時は、本気で天変地異の前触れかと危ぶんだものであった。
ジャン・ハボック。
それが、マース・ヒューズを骨抜きにした青年の名であった。
上官の親友の部下であると言う以外は、取り立てて目立つ存在ではないと思う。
少し細身ではあるけれど鍛えられた体付きに、標準より少し高めの身長。
多少整ってはいるけれど、彼の上官程に人目を集める程でもない造作の顔立ちに、この国では一番多いだろう金髪碧眼。
カールにとってはどこにでもいる青年でしかない彼が、どうして上官を惹き付けてやまないのかは到底理解出来るものではないが本気だと言うなら、大変喜ばしいかぎりだと思っていたのだ。
今日の、朝までは。
(まさか、この人がここまで壊れてるとは思ってなかったのになー)
大袈裟なまでの溜息を聞こえよがしに零せば、上官は子供のように唇を尖らせて言ったのだ。
「…何だよー。ちょっちくらい良いじゃんかー…。俺、何時もちゃんと頑張ってんじゃん」
ちょっとくらい、大目に見てくれても良いじゃんかよー。
などと、ぷちぷちと小さな声で言い続ける上官に、本気で眩暈を覚えつつ、カールはげんなりとしつつ窘めた。
「…仕事を疎かにするなら、本人に言い付けますよ?…そんな事になったら、責任感じて帰るって言い出すかもしれませんねぇ」
普段どれだけ軽い態度を取って周囲を煙に巻いてみせようと、彼の上官は自他共に認める切れ者であった。
そして。
良い人に見せてその実、とんでもない悪い人である事もカールは不幸な事に知っていた。
女性達との付き合いも親友であるロイ・マスタング大佐程に派手な訳ではないけれど、そこそこには激しく。
しかし、マスタング大佐よりも性質の悪い事ばかり仕出かしていた。
女に優しく見えながら、げれど本当は彼女達に欠片も感心がない事に、副官と言う立場で側に居るが為に見えてしまって。
本当は、女遊びで浮世を流すマスタングの方が何倍もマトモな事に嫌でも気付かされた。
その人当たりの良い笑顔で、総てを煙に巻いて。
誰にも、その裏にある悪い顔を見せずに。
そして。
何よりも性質が悪いのは、
戦場でさえ、軽やかにステップを踏むように渡り歩いてしまう。
恐らく。
自分の命なんてものに、欠片も執着がないのだろうとカールは思っている。
そして直接聞いた事はないが、その通りなのだろうとカールは確信していた。
そんな、男であったのだ。
マース・ヒューズと言う男は。
その上官が、気付けばあの青年にメロメロになっていた事に気付いた時は、本気で天変地異の前触れかと危ぶんだものであった。
ジャン・ハボック。
それが、マース・ヒューズを骨抜きにした青年の名であった。
上官の親友の部下であると言う以外は、取り立てて目立つ存在ではないと思う。
少し細身ではあるけれど鍛えられた体付きに、標準より少し高めの身長。
多少整ってはいるけれど、彼の上官程に人目を集める程でもない造作の顔立ちに、この国では一番多いだろう金髪碧眼。
カールにとってはどこにでもいる青年でしかない彼が、どうして上官を惹き付けてやまないのかは到底理解出来るものではないが本気だと言うなら、大変喜ばしいかぎりだと思っていたのだ。
今日の、朝までは。
(まさか、この人がここまで壊れてるとは思ってなかったのになー)
大袈裟なまでの溜息を聞こえよがしに零せば、上官は子供のように唇を尖らせて言ったのだ。
「…何だよー。ちょっちくらい良いじゃんかー…。俺、何時もちゃんと頑張ってんじゃん」
ちょっとくらい、大目に見てくれても良いじゃんかよー。
などと、ぷちぷちと小さな声で言い続ける上官に、本気で眩暈を覚えつつ、カールはげんなりとしつつ窘めた。
「…仕事を疎かにするなら、本人に言い付けますよ?…そんな事になったら、責任感じて帰るって言い出すかもしれませんねぇ」
by momomame at 00:53 |
小説 : マース・ヒューズ中佐の子犬3 |
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