マース・ヒューズ中佐の子犬3

 けれど。
 ドアを開いた瞬間。
 そこには、ヒューズが立っていたのだ。
「中佐っ!」
 走り出た勢いのままに抱き付けば、物凄い力で抱き締められた。
「……っ、ち、中佐っっ」
 その姿に動揺した軍曹はそれでも、相手は幼い子供の事だ。
取り繕う事くらい出来ると思っていたのだろうか。
 媚びるような口調で、近付いてくる。
「中佐、な、何か物取りらしいっスよ?」
 無事で良かったっスね。
「何かこの子、恐怖で混乱してるみたいっスけど、犯人はもう逃げたみたいです」
 言った瞬間、その額には無機質な鋼が押し付けられた。
「ち、中佐っ?」
「言う事は、それだけか?」
 ガチャリと音を立てて、引き金に指がかかったのを見て震え上がった。
「俺の大事なハボックをここまで嬲っといて、シラ切れると思うなよ?」
 つか、お前何の目的でこんな事仕出かした?
「…姉貴の仇討ちか?…俺に対する恨みか何かか?」
「…な、何でそんな子供の言う事なんか、信用するんスかっ」
 同じ軍人である自分を、何故信じてはくれないのかと言う軍曹にヒューズは冷笑を零した。
「当たり前だろう?ちょっと、ハボックと似てるって思ったお前とハボックなら、ハボック取るに決まってんだろ」
 やっぱ、似てるって程度の類似品になんて眼をかけるんじゃなかったぜ。
 いかにも忌々しいと言う口調で話すヒューズは、腕に抱いた子供に話しかける。
「大丈夫か?ハボック。…すまなかったな、俺が不用意に家にお前が居る事をちらっと漏らしちまったから」
 こんな事になったと告げるヒューズの言葉が、胸に痛く。
 だから、擦り寄るようにしてその腕に身を預けた。
 やり方を間違えたのは、本当だけれど軍曹がヒューズに抱いていた好意は、本当なのだろう。
 それを、ヒューズは知っている。
 知っていて、けれど気付いていないフリをしたのだ。
 多分、気付いている事を知れば軍曹は、それ以上に惨めな気分を味わう事にも気付いているのだ。
 だったら。
 ハボックも知らないフリをするべきだと思った。
「…いいっスよ。研究所や、モグリの錬金術師に知られるよりはマシじゃないっスか」
 そんな言葉で茶化しながら、ハボックはヒューズの胸に擦り寄った。
 そんな甘えた態度は気恥ずかしいけれど。
 こんな事で、この酷く優しい人の傷ついた気持ちを慰撫出来るなら良いと思いながら。
テーマ: 鋼の錬金術師 -  ジャンル: アニメ・コミック
by momomame  at 01:06 |  小説 : マース・ヒューズ中佐の子犬3 |   |   |  page top ↑
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