マース・ヒューズ中佐の子犬3

 カツカツ。
 その、階段を上る音にハボックは首を傾げた。
 他の人が聞いたなら、何の事はない足音だ。
 けれど。
 軍人であるハボックにとっては、その足音は一番聞きなれた音で。
 だからこそ、不思議だったのだ。
 こんな時間に、このアパートに訪れる軍人など居る筈がないのだ。
 ヒューズは、ここに住んでいる軍人は自分一人だと言っていた。
 なら、一体何の用でこのアパートに軍人が来るのだろうか?
 少し気になって聞き耳を立てていれば、その足音はこの部屋のすぐ近くで立ち止まったのだ。
「?」
 立ち止まってはいるものの、ノックをする様子もなくじっとそこに居る気配だけがあって、更に首を傾げる。
 見るからに愛らしいその仕草をヒューズが見れば、完全に舞い上がるだろう事にも気付かず、ハボックは慎重に玄関に向かった。
 元々、佐官が住むには不十分な広さしかないアパートである。
 慎重に玄関に向かっても、未だ五歳児前後の慎重しかないハボックの歩幅でも、ものの数歩の距離だ。
 じっと。
 玄関のドア越しに気配を窺えば、そこにあるのはものの見事に気配がバレバレの相手で。
 まだそれ程、実践の経験がない事がハボックには解った。
 その事に少しだけ、ほっとする。
 一瞬、何らかの情報を嗅ぎ付けたどこぞの研究者か、モグリの錬金術師かと危ぶんだのだ。
 けれど、そんな相手ならばもう少しは慎重な態度をとる筈だ。
 こんなに思慮も配慮もない行動には、出ないだろう。
 だから。
 一体、誰だろうかとハボックはじっとドアを見詰めた。
 そして。
 少しの間、逡巡した相手はそれでもノックをしたのだ。
テーマ: 鋼の錬金術師 -  ジャンル: アニメ・コミック
by momomame  at 13:38 |  小説 : マース・ヒューズ中佐の子犬3 |   |   |  page top ↑
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